民法上の不法行為があった場合、被害を受けた方は損害賠償を請求することができます。その損害には身体的精神的苦痛という損害も含まれるなど様々な費目が含まれています。
それでは浮気を理由に損害賠償を請求することはできるのでしょうか。また損害の内容に「浮気調査の費用」を含めることはできるのでしょうか。ここで解説していきます。
浮気の当事者に請求できるもの
配偶者や婚約者が浮気をした場合、民法上の不法行為と評価されて生じた損害を賠償する義務を課せられることがあります。
この賠償請求の根拠は民法第709条にあります。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用:e-Gov法令検索 民法第709条(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
ただ、浮気に関連するあらゆる損害につき賠償請求をできるわけではありません。浮気と損害に因果関係が認められるものでなければ請求は認められません。
請求を実現するためのポイント
「浮気」という行為と「浮気調査の費用」という損害に因果関係が認められれば、不法行為による損害賠償請求として、負担した調査費用分を回収できる余地があります。その結果を左右するポイントとしては①調査が必要であったかどうか、②調査費用は相当かどうか、の2点が挙げられます。
調査が必要であったかどうか
裁判にて浮気調査費用分の請求を認めてもらうには、“不貞行為の立証をする上で必要なものであった”と評価してもらうことが大切です。
逆に言うと、裁判上の争点が不貞の有無ではない場合や、相手方がすでに浮気を認めている場合などには請求できない可能性が高くなります。これに対し不貞の有無が裁判上の争点となっており、相手方も浮気の事実を否定している、自ら証拠収集することができず浮気調査の依頼をせざるを得なかったといった状況では請求が認められやすいと言えます。
調査費用は相当かどうか
仮に上記の必要性が認められたからといって、常に調査費用の全額が認められるとは限りません。請求が認められる額に関しては、裁判所の考える“相当な範囲”までです。
実際、浮気調査の費用として100万円以上かかったとしても、損害賠償請求を通して裁判上回収できるのは数十万円程度です。
もちろん、相手方の了承があればいくらでも請求をすることはできますが、当事者がこの点につき争っており、裁判で解決を図ろうとしている場合にはこのような額にとどまるケースが多いということです。
ただ、満額に近い額を請求出来た例もあれば1割未満しか請求できなかった例もありますので、ケースバイケースで考える必要があるでしょう。具体的な額を左右するのは立証のための寄与度です。調査の結果が唯一の証拠であり、決定打となるような場合には、比較的大きな割合で認められると考えられます。
これに対し調査結果があくまで補強的な役割しか担っていないのであれば満額近くを請求することは難しいでしょう。
示談交渉なら全額請求できる可能性もある
相手方が請求額に納得をしていれば全額を請求することも可能です。裁判での請求は最終手段であり、パートナー間での揉め事でここまで発展するケースは珍しいとも言えます。
そこで注目すべきは「示談交渉」による損害賠償請求です。
示談交渉は裁判所を介さず、当事者のみでの話し合いでする和解のことです。当事者のみと言っても弁護士に代理で交渉を頼むことはできますし、示談で解決を図ることでスピーディかつ柔軟な和解を目指すことができます。
そのため調査費用に関しては示談交渉で満額の請求をするため、有力な証拠と弁護士を味方につけると良いでしょう。